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2022 07/29
コラム
カウンセリングは、クライアントに寄り添う自由なサポート

2020/10/01

vol.04


カウンセリングは、
クライアントに寄り添う自由なサポート


磯部 裕幸
不動産カウンセラー、不動産鑑定士
CRE(USA)、FRICS(UK)
日本ヴァリュアーズ株式会社

振り返りますと、学生時代に不動産鑑定士をめざそうと思い立ちましたのは、特に不動産に興味があったからというわけではなく、「資格」を持っていれば独立した専門家として個人の力で仕事ができていくかもしれず、だとするならばサラリーマンではない職業専門家の道に進もうと思いたったからです。ただし、超難関試験は避けつつ、社会的に意義がありそうで、カバーする領域が広そうな資格にしよう!という中、「資格総覧」というような本の中から偶然選んだだけだったと思います。

不動産のことについて何も知らないまま20代前半で試験に受かり、数年後には資格を得て、公的評価を中心とした実務に没頭することになっていったのですが、不動産鑑定評価という領域は法的に不動産鑑定士だけに認められてる中立的な仕事ですから、不動産鑑定評価基準という統一的な共通言語に則った定式性・定型性が必要になります。その意味では、評価人個人の自由な発想や大胆な提案、クライアントのゴール達成のための具体的なサポート、といった、専門家が本来果たすべき役割と不動産鑑定評価が果たすべき役割との間にはかなりギャップがあると感じざるを得ませんでした。

かといって、無限とさえ言える多様な不動産問題について、専門家として助言や提言ができるほどの知識や能力を持ち合わせている訳でもありませんから、これが自分の抜きん出た専門分野だ(不動産鑑定評価以外の分野で)、と誇れるようなものもありません。ですので、ご相談いただいた一つ一つの内容についてゼロから勉強しつつ、クライアントと一緒に悩むことで、少しでもお役に立てるアドバイスをご提供するように努めてきました。

ある意味素人みたいなモノですから、そこで多くの報酬を期待することは望むべくもありませんが、海外、特にアメリカではカウンセリングをいう業務がとても重要視されていて、多くの分野の第一人者がCRE(Counselor of Real Estate)の称号を保有して活躍していることは大きな励みでもあり、自分がその称号を名乗ることになった1980年代後半以降、アメリカのカウンセリング実務からは本当に多くを学んできました。

そんな中で私自身も年を重ね、人生最後の冒険として、唐突ですが5年ほど前からミャンマーでの活動を始め、コロナ禍の前までは月の内2週間近くヤンゴンに滞在していました。現状まだ厳しい渡航制限が敷かれていまして、ここ半年は訪緬が叶わずストレスがたまっていますが、ことばも分からず、土地制度も登記制度も都市計画制度も判然としない中で、市場分析や評価・デユーディリジェンス、媒介情報提供や開発プロジェクトのFSなどを、日系を含む外資系企業に少しずつ提供してきています。評価制度はもちろん、取引を見守る媒介業務なども法的な裏付けが制度として確立されていない中、一つ一つの仕事はまさに手探りですが、地元企業や個人、地元金融機関などからご相談が舞い込むこともありまして、そんな時は本当に緊張するのですが、ようやく育ってきたローカル・スタッフと共に、問題解決に向けたカウンセリングをすることを常に心がけています。

最後に、小さな仕事ですが、試験的に2年ほど前からシェアハウスのプロデュースをしていますのでご紹介します。ミャンマーの若者たちは、日本でいう就活をして学校卒業と同時に一斉に就職するということが少なく、かつ就職先が寮や社宅を提供してくれることもほとんどありません。大卒の初任給が$200~$300という中での彼らの一般的な住まい方は、30~50ヘーホーメートル程度のワンルームタイプのアパートでのルームメイト数人との共同生活です。そこではプライバシーもなく、台所やトイレ・浴室を3~5人でシェアしていることも多いです。そこで、2~3寝室 + 2浴室・トイレの一般的な100ヘーホーメートル程度のアパートを借り、少し間仕切りを加えて4人程度が暮らせるシェアハウスに改装して貸し出しています(大家さんの許可を得た上での転貸ですね)。ミャンマーでのそれなりのグレード物件の賃貸慣行は、一般的に1年分の家賃前払いですので、結構な負担ですし、ローカルであれ海外からであれ、若者にとっては多額の家賃負担はとても厳しいです。外資系となる私の会社で長期の賃貸業を営むのも法的に難しいですので、テナントとの賃貸契約は最長3ヶ月にしています。ここでの家賃自体、地元の若者にとって決して十分な安さではないのですが、それでも、居住期間3ヶ月から半年程度で、ほぼ満室が続いています。今後は、空室となっているアパートやコンドミニアムを保有する方々とのコラボレーションで、リーズナブルなクオリティの居住空間を多くの若者達に提供していけたらと思っています。
なお、私のミャンマー法人で、4年ほど前から不動産・都市開発系のニュースを月一回発信しています(www.jvmyanmar.com/2020/09/14/jvm/, をご参照ください)。サマリーのみ日本語で本文は英語となってしまいますが、ご興味のある方はこのサイトの下部にありますコメントコーナーに、日本語で結構ですから”配信希望”とでも書いてお送りください。次回からお送りするようにいたします。

何はともあれ、カウンセリングを通じて問題解決に貢献できた時の喜びはひとしおです。

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