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2023 09/26
コラム
第5回オルタナティブデータの不動産活用に関する研究会の開催報告

2023/9/26

vol.28


 

第5回オルタナティブデータの不動産活用に関する研究会の開催報告

 


竹田 賢治
不動産戦略アドバイザー
日鉄興和不動産株式会社

 

開催日:2023年9月19日(火)
場所:赤坂インターシティAIRにて、ハイブリッド開催(対面&WEB)
発表者:馬場社長(株式会社BBI
対面参加者:渡辺弘(プランドゥカンパニー社長)
コーディネーター:村木信爾(JAREC常務理事、大和不動産鑑定)
         竹田賢治(JAREC理事、日鉄興和不動産)

※WEB参加者含め11名が参加

【テーマ】
「DMO(観光地域づくり法人)によるスマホ位置情報活用」 株式会社BBI 馬場社長

【タイムテーブル】
18:00~18:30 対面参加者の名刺交換ご挨拶Time
18:30~    研究会スタート
《5分》   トピック紹介:Travel Voice記事
             「観光庁、世界的DMO8カ国の観光戦略の比較・調査を発表、満足度の指標の違いなど分析」ご紹介

《30分》   ★株式会社BBI 馬場社長よりテーマ発表★
《25分》   質疑応答

今回のテーマでは、当研究会でも着目している移動データの具体的活用事例として、秩父エリアの観光客(想定)の動向について、様々な角度からの分析が行われた内容とその検証結果(分析)をご紹介いただいた。
特に移動データの観測ポイントの広域性と時間軸からのアプローチについては、大変興味深い検証結果が得られていると感じられた。どの地域に居住する人(含む海外)がどのようなルートで秩父に入り、ターミナルを検証ポイントの一つとして、どのような観光スポットを何か所、どれぐらいの時間で周遊するかという着眼点によるものであった。

特に収集された移動データが、携帯電話データ(本体)のみではなく、SNSの写真UPなども解析に含まれるという点が、興味を掻き立てられるものであった。
この着眼点は、観光地の活性化を企画するDMOにとって、とても有益なオルタナティブデータ活用法と言えるのではないか、と参加メンバーのディスカッションでも提言された。
WEB参加者の中に、実際のDMOのメンバーも加わっていたことから、実際の移動データとDMOが企画する周遊モデルとのギャップを確認するとともに、どのような施策(コストの多寡は別に)を打てば周遊度がアップするか?や消費行動が行われるか?といった具体的な観光施策に結びつくことが想像されるものであり、今後のデータ調査と観光施策の具現化を結ぶ活動に期待したい。

さらに観光エリア開発の観点から、移動データの検証による「観光スポットと移動範囲の関係性」や観光施策の有用性が多方面からアプローチされることになれば、ホテル開発といった投資の呼込みはもちろん。バス・タクシー・鉄道・船といった交通機関の効率的運用(MAAS)とともに、これらを補完するレンタカーやレンタサイクルといった移動手段の必要台数・配置場所の設定等もかなり効率的・効果的に検討を進めることができるのではないかとの意見も出ていた。

これらのディスカッションの中で、特に印象的であったのは、観光エリアを平面図でとらえるところから、時間軸(朝~晩~夜中:春夏秋冬)による観光スポット(日の出、夕暮れ、星空など)と移動の変化(徒歩で、他の移動手段で、そこに短時間の立ち寄り、宿泊など)を立体的に捉えることで、観光エリアの重層的な魅力を伝えることが出来、訪れる人々に、印象度の高い時間と空間を提供できるのではないかという意見であった。
観光地における不動産Valueとの観点からみると圧倒的にオペレーショナルアセットの存在価値が論点の中心となる。

ここに訪れる人が「どのような時間を過ごすのか?(カナダ人による紅葉狩りの事例のように=選択肢がどれだけあるのか?)」は、まさに、その不動産の根本的な利用価値であり、この有効活用がValue向上のカギとなることは言うまでもない。
またそれを支える人(ホテルであれば運営スタッフ・清掃係、料理店であれば調理人・配膳係、観光スポットであれば維持管理人など)がどれだけ確保できるのか?その人々の移動は?どこに住むのか?など、まさに町の運営そのものが、人(=移動データ)により回っていることにも着目する必要がある。

今回は簡単にしか触れられなかったが、そこで消費されるお金(クレジットカードや電子マネー)のオルタナティブデータが加われば、観光エリアを一つの商業モールとして捉えることも可能と思料され、商業コンサルタントや商業デベロッパーなどの得意な領分となることも想像でき、これまでの行政主体の観光への取り組みに民間のノウハウ導入が進むことが期待される。

第3回研究会でご紹介いただいた商業出店時マーケット分析手法や観光エリアに大きな影響を及ぼす気象分析なども折り重ねることで、DMOが企画する戦略に資することになればと考える。

その結果として観光が活性化し、更なる発展が見込まれれば、不動産価値・エリア価値向上の具体的な投資が、オルタナティブデータの活用という今までの経験則に留まらない、より具体的な検証材料として発展していくことが期待されるとともに、クラウドファンディング等の嗜好性の高い投資の呼び込みにもつながる可能性も考えられる。

将来性の議論が中心となっているが、それがオルタナティブデータの特性であり強みであると考えると、DMOを中心とした観光エリア開発のモデルケース作り等にオルタナティブデータの活用範囲やその度合いを高めていくことが、起爆剤の一つになるのではなかろうか。

今後も不動産価値向上に資する、活用が期待される「データ」のリスト拡充を行います。

≪研究会で利用されたジオマーケティング様の説明資料≫

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